Takatani Note

広義固有空間

$ \def\W{\widetilde{W}} $

この記事では、広義固有空間(または一般固有空間, または準固有空間)の求め方について解説します。

定義

定義
$A\in M_n(\C)$ とし, $\a\in \C$ を $A$ の固有値とする. $$ W(\a):=\Ker(A-\a I) =\{\x\in \C^n \mid (A-\a I)\x=\0\} $$ を固有値 $\a$ に対する固有空間(eigenspace)という.

定義
$A$ を $n$ 次複素行列, $\a$ を $A$ の固有値とする. ある自然数 $k$ に対して $$ (A-\a I)^k\x=0 $$ を満たす $\x\in \C^n\sm\{\0\}$ を $A$ の固有値 $\a$ に対する広義固有ベクトル(generalized eigenvector)という.
固有値 $\a$ に対する広義固有ベクトル全体に $\0$ を加えた集合: $$ \W(\a):=\{\x \in \C^n \mid \exists k\in \N,\ (A-\a I)^k\x=0.\} $$ を $\a$ に対する広義固有空間(generalized eigenspace)という.

※広義固有空間 $\W(\a)$ は固有空間 $W(\a)$ の部分空間である.

性質

ここでは, 広義固有空間の性質を述べる.
まずは次の補題を用意する.

広義固有ベクトルは線型独立

定理
$A\in M_n(\C)$ とし, $\a_1,\cd,\a_s$ を $A$ の相異なる固有値とする. このとき, これらの固有値に対する広義固有ベクトル $v_1,\cd,v_s$ は線形独立である.

[証明]  [松坂 8章命題8.5]参照.

広義固有空間の和は直和

上の定理から次が成り立つ.

定理
$\a_1,\cd,\a_s$ を $A$ の相異なる固有値とすれば, 広義固有空間の和 $\W(\a_1)+\cd+\W(\a_s)$ は直和である.

[証明]  [松坂 8章命題8.6]参照.

分解定理

この節では,『ベクトル空間 $\C^n$ は広義固有空間の直和に分解される』という分解定理を証明する.

定理 (分解定理)
$A\in M_n(\C)$ とし, $\a_1,\cd,\a_s$ を $A$ の相異なる固有値全体とする. $$ \Phi_A(x)=(x-\a_1)^{n_1}(x-\a_2)^{n_2}\cd (x-\a_s)^{n_s} $$ とする. このとき, 各 $i$ に対し $$ \W(\a_i)=\Ker(A-\a_i I)^{n_i},\ \ \ \dim \W(\a_i)=n_i$$ が成り立ち, $$ \C^n=\W(\a_1)\op \W(\a_2)\op \cd \op \W(\a_s). $$

[証明]  ケーリー・ハミルトンの定理により $\Phi_A(A)=O,$ すなわち $$ (A-\a_1 I)^{n_1}(A-\a_2 I)^{n_2}\cd (A-\a_s I)^{n_s}=O $$ である. したがって $$ W_i=\Ker(A-\a_i I)^{n_i}\ \ \ (i=1,\cd,s) $$ とおけば, $$ n=\dim\Ker O=\dim\Ker \Phi_A(A) \leq \sum_{i=1}^s\dim W_i $$ となる. 一方明らかに $W_i \sub \W(\a_i)\ (\all i)$ であるので, $$ \sum_{i=1}^s \dim W_i \leq \sum_{i=1}^s \dim \W(\a_i) =\dim(\W(\a_1)\op \cd \op \W(\a_s)) \leq n $$ 以上から, $$ \dim(\W(\a_1)\op \cd \op \W(\a_s))=n,\ \ \ \dim W_i = \dim \W(\a_i), $$ すなわち $$ V=\W(\a_1)\op \cd \op \W(\a_s),\ \ \ W_i=\W(\a_i) $$ が得られる. $\dim \W(\a_i)=n_i$ については[松坂 定理8.8]を参照せよ.

例題

例題
次の行列の各固有値に対する広義固有空間を求めよ.
$A= \m{ 2 & 1 & 1 \cr 0 & 2 & 0 \cr 0 & 0 & 1 }$

解答
[解答]
$\Phi_A(x)=(x-2)^2(x-1)$ により, $A$ の固有値は $2$ と $1$ である. 系により, $$ \W(2)=\Ker(A-2I)^2,\ \ \ \W(1)=\Ker(A-I) $$ である. まず, $\W(2)$ については $$ (A-2I)^2= \m{ 0 & 1 & 1 \cr 0 & 0 & 0 \cr 0 & 0 & -1 } \m{ 0 & 1 & 1 \cr 0 & 0 & 0 \cr 0 & 0 & -1 } = \m{ 0 & 0 & -1 \cr 0 & 0 & 0 \cr 0 & 0 & 1 } $$ により, $$ \W(2)=\la \m{1\\0\\0},\m{0\\1\\0} \ra.$$ 次に, $\W(1)$ は $$ (A-I)= \m{ 1 & 1 & 1 \cr 0 & 1 & 0 \cr 0 & 0 & 0 } $$ により, $$ \W(1)=\la \m{1\\0\\-1}\ra.$$

例題
次の行列の各固有値に対する広義固有空間の「次元」を求めよ.
$A= \m{ 2 & 1 & 1 & 0 \cr 0 & 2 & 0 & 1 \cr 0 & 0 & 2 & 0 \cr 0 & 0 & 0 & 5}$

解答
[解答]  $\Phi_A(x)=(x-2)^3(x-5)$ により, $A$ の固有値は $2$ と $5$ である. 系により, $$ \dim\W(2)=3,\ \ \ \dim \W(5)=1. $$